[セミナー] 発票主義から発生主義への移行のポイント

fapiao

2014年6月23日水野コンサルタンシー中国ビジネス講習会(会計税務編)にて「発票主義から発生主義への移行のポイント」と題する発表を行いました。

税務署の権限が強く、性悪説に基づいて管理される中国では、会計は税務会計に引きずられがちです(=発票主義)。
しかし正確な損益管理を行っていくためには発生主義への移行が不可欠となります。
在庫管理、原価計算、連結決算の基礎となる発生主義への移行のポイントをお話ししました。

以下、当日のレジメの内容になります。

1.発票主義、発生主義とは何か

  発票主義 発生主義
収益の認識 発票の発行 収益の発生時点
例:受注、出庫、検収
費用の認識 発票の取得 費用の発生時点
例:発注、入庫、検収

2.なぜ発生主義が必要か

内部管理上 在庫管理との整合性、正確な期間損益の計測(原価計算)
外部との関係 債権債務の照合、連結相殺消去(内部取引、債権債務)

2.1 在庫管理との整合性

  発票主義 発生主義
当月入庫:
(借)商品 | (貸)買掛金
発票の取得が遅れると当月に認識されない。 入庫により費用として認識される。
当月出庫:
(借)払出商品 | (貸)商品
出庫により振替仕訳を切る。
当月入庫の影響により出庫単価に問題が生じる。
※出庫単価=(月初在庫金額+当月入庫金額)÷(月初在庫数量+当月入庫数量)
出庫により振替仕訳を切る。
出庫単価に問題は生じない。
月末在庫(理論値):
月初在庫+当月入庫-当月出庫
帳簿上の数量と在庫管理上の数量が異なる。また月末在庫単価にも問題が生じる。 帳簿上の数量と在庫管理上の数量が一致。月末在庫単価も正しい。

2.2 正確な期間損益の計測(原価計算)

  発票主義 発生主義
原価払出:
(借)売上原価 | (貸)払出商品
出庫単価の計算が正確でないため、売上原価の金額も正確ではない。 出荷単価が正確であることから、売上原価も正確な金額となる。

2.3 債権債務の照合、連結相殺消去

  発票主義 発生主義
債権債務の照合・消去 親子間の売掛金・買掛金が一致せず照合・消去できない。 (借)買掛金–日本親会社 | (貸)売掛金—中国子会社
内部取引の消去 親子間の売上・仕入金額が一致せず消去できない。 (借)売上–中国子会社 | (貸)仕入—日本親会社

3.2発票主義に引きずられる理由は何か(仮説)

3.1 税務上の調整が面倒

2014/12発生主義で費用計上[i]:
(借)商品(仮計上) 100,000 | (貸)買掛金(発票なし) 100,000
2014/12販売:
(借)売上原価 100,000 | (貸)商品 100,000
2014/12税務調整:
(借)所得税 25,000 | (貸)未払税金–未払所得税 25,000
2015/1 増値税専用発票を入手
(借)買掛金(発票なし) 100,000 | (貸)商品(仮計上) 100,000
(借)商品 100,000 | (貸)買掛金 100,000
(借)未払税金–仕入税額 17,000 | (貸)買掛金 17,000
(借)未払税金–未払所得税 25,000 | (貸)過年度損益調整 25,000

(参考:発票主義の仕訳)
2015/1 増値税専用発票を入手
(借)商品 100,000 | (貸)買掛金 100,000
(借)未払税金–仕入税額 17,000 | (貸)買掛金 17,000

3.2 保守主義

帳簿計上の根拠となる証憑がないため、会計上の保守主義の観点から費用計上しない。

例:
生産管理部→入庫数量は管理しているが、価格は分からない。
購買部→発注情報(価格、数量)は管理しているが、入庫のタイミングが分からない。

4.どのように解決するか

4.1 管理責任者

発生主義と言っても幅があるため、管理責任者は会社に適した計上時点を決定して財務部に通知する。

収益の認識 受注、出荷、検収、など
費用の認識 発注、入荷、検収、など

4.2 売上・仕入担当部門

売上伝票・仕入伝票を発行して財務部に回付し、帳簿計上の証憑とする。
例:

仕入伝票 入庫基準により購買部門が発行
売上伝票 検収基準により営業部門が発行

4.3 財務部門

4.3.1 発票主義と発生主義の差異分析

売上伝票・仕入伝票を一覧にし、発票の発行・取得を確認するための一覧表を作成する。年末には税金調整額を明記して、財務部長の確認を得る。

4.3.2 仕訳入力時の注意

売上:商品払出時と売上認識時の仕訳を分け、売上認識時に発票を発行する。

商品払出時点 (借)払出商品 | (貸)商品
売上認識時点 (借)売上原価 | (貸)払出商品
(借)売掛金 | (貸)売上
(借)売掛金 | (貸)未払税金–売上税額

仕入:仕入認識時に仮計上し、発票取得時に再度正式な仕訳を計上(3.1を参照)。

4.4 (簡便法)発票主義+期末洗い替え

年度決算でのみ発生主義にすればよい場合、月次決算は発票主義で行い、12月末のみ仮計上を行い翌年1月初に仮計上を相殺する。
2013/12月末:
(借)商品(仮計上) 100,000 | (貸)買掛金(発票なし) 100,000
2015/1月初:
(借)買掛金(発票なし) 100,000 | (貸)商品(仮計上) 100,000

[i] [1994]财会字第31号、2により仮計上(暂估)時の仕入増値税額は計上不要。